・3度目のピエール・ボナール《プロヴァンス風景》(東京国立近代美術館MOMATコレクション) 。相変わらず素晴らしい。成立年は1932年となっているので、65歳の時の作品(享年79歳)だから、最晩年ではないが晩年だったとはいえる。作風としてもいかにも晩年。
・ぱっと見た瞬間、前に見た印象よりもずっと暗い感じがしたが(じっさい全体的には落ち着いた色が占めている)、数分ほどかけてじんわりと明るくなってくるのがわかる。夕暮れの時に暗くなりながら明るくなるのに似ているかもしれない。
・やっぱりつかみどころがない。セザンヌのようにストロークを追うこともできない。けれどじっと見ることができるのが奇妙。普通、じっと絵を見るのは難しい(絵に限らないが)。いまいちな絵画はすぐに見飽きるし、いいと思った絵でも長くは耐えきれない。ボナールはなまじ見ることができるから油断してしまうが、出会うことも出会い損ねることもできない感じがする。