Small Photo Diary

Photo Diary, QuickSnap(写ルンです), iPhone SE, Voice Memos, Camera, DSC-RX100, その他の日記(https://mitsueyou.hatenadiary.jp/), Tumblr(https://yumitsue.tumblr.com)

Like a squirrel

    鬱蒼とした木の下で、十数人の若い男女が中腰で前屈みに、眉間にシワを寄せて地面を見つめ、よたよた歩きながら、時に地面に手を伸ばしているのを彼女はじっと見ていた。とつぜん居場所を変えられて右往左往する虫のようだった。私服だが高校生だろう、いく人かの手にはプリントが握られていた。彼らはドングリを拾っていた。ただ歩きにくくするためだけに敷かれたような砂利道が縦横にえんえんと伸びる御所の中だった。入場が制限される中心部を取り囲む木々には丁寧に手が入れられていたが、巨大なものがとても多く、彼女にしてみれば広い公園の少ない市内の憩いだった。生徒たちは理科の授業で園内のドングリを集め、加熱した後、味を比較することになっていた。くぬぎ、ナラ、様々なカシ、当たり前だが、ドングリといっても味が様々で、苦くて食べられたものじゃないものもあったが、そのうちのいくつかはナッツのように濃厚で甘く香ばしかった。期待していなかったからという理由だけではない、小さなフライパンであぶったドングリを食べた一人の男子生徒は、こんなにおいしいのだったら俺はドングリを食って生きていける、と思った。すぐに脳が活性化して怖いくらいだった。「先生、どうしていままで教えてくれへんかったん?」ぼりぼりとドングリを噛み砕きなら生徒は口走った。私は目の前にいる、そのハスキーな声が好きで気になっていた女子生徒に思わず「これやばくない?」と聞いた。切羽詰ったら、どうしようもなくなったら御所に来て、有り余るドングリを食べて日々を乗り切ろう、そう思うと、自分の未来が安泰な気がした。ドングリを食べていたのだという縄文の人たちのように、あるいはリスのように生きればいい。それなのに、あの記憶もいつの間にか男の頭の中の遠い場所に沈殿し、ふたたび思い出すのは東京の大学を出て働き始めて何年もたったある日、昼休み、職場の近くの植物園で何気なくクヌギのドングリを拾うのを待たなければならないだろう。

Gardens