Small Photo Diary

Photo Diary, QuickSnap(写ルンです), iPhone SE, Voice Memos, Camera, DSC-RX100, その他の日記(https://mitsueyou.hatenadiary.jp/), Tumblr(https://yumitsue.tumblr.com)

Secret of Secret

百年前に書かれた掌編である。課題1:配布したテキストに書かれた生き物のイメージを視覚的に表し、パラパラ漫画の要領でトレースして動かすこと。それはひらべったい星形なのだという。五芒星ではなく、角はいくつもあるのだろう。木製の糸巻きのようで、実…

Reminder

どうしてここにいるのだろう。秋の、何もかも眩しい一日だった、細い通りから川岸に出て、向こう岸を歩く人の顔がぎりぎりわかるくらいの浅い川面、茫々とした水草を見ていると、そう思った。美術教師は生まれ育った狭い土地を出たことがほとんどなかった。…

Monster

基本は持ち帰りや配達の店だ、間口の狭い石畳の店内には四人掛けの小さなテーブルが二つあるだけで、すぐ目の前が調理場だった。暖簾で仕切られていたが、建物はずっと奥までぐっと伸びている。その日、珍しくテーブルの埋まった店に入ると彼女は相席するよ…

Garden

けれどあの大小様々な石が刺さった低木の生い茂る小山、こちらと水で隔てられた築山を濡れ縁から目の前にすれば、これはなに? という素朴な思いが強く湧き上がってはこないだろうか。一歩ごと、石や植物が視界をえぐるように動き、じっとしていても視線が動…

Like a squirrel

鬱蒼とした木の下で、十数人の若い男女が中腰で前屈みに、眉間にシワを寄せて地面を見つめ、よたよた歩きながら、時に地面に手を伸ばしているのを彼女はじっと見ていた。とつぜん居場所を変えられて右往左往する虫のようだった。私服だが高校生だろう、いく…

Telephone

家の中にはいつも電話の音が鳴り響いていた。声ではなく、音が。家族は電話というものを煙たがっていた。どんな技術にも人間は慣れる、鈍感で、技術におどろき続けることができないのだ。けれど祖母は違っていた。物体からあの単純で暴力的な鈴の音が聞こえ…

Home

夜中に一度目が覚め、寒くて上着を羽織ったことだけは覚えていた。起きると明るかった。朝の早い時間だ。体は痛むが大したことはない。一軒家の間の、建売住宅二軒分くらいの敷地には、一面に茫々と雑草が生え、奥には太いが低いシイノキが立っていた。どう…

Town

計画というのは不意に現れる。他人のそれであれ、自分のそれであれ、知っていようが知っていまいが、計画となった途端、急に目の前に現れる。いまだ東急東横線の渋谷駅は地下化されておらず、動き出した電車はゆっくり大きなカーブを描いて高架の上を西へと…

Lost

市内に出て観光する気持ちも起こらない時は、鴨川をただ上流に向かって歩き、疲れたらバスに乗って中心部に戻るというのを繰り返した。あるいは盆地を取りかこむ低い山の尾根をぐるっと歩いた。とはいえ登山が好きなわけではなかったし、山の植物や瑞々しい…

Speed

ゲームみたいなものでしょう? と冨山豊子はよく口にした。幼少の頃からだ、この子はすでに頭の良さを見せていた、学校に集まって他の子供達と交わるようになると、どうしてこの子たちはやることなすこと的を外すのだろう、と不思議がっていた。試験といって…

Mushroom

どうして人が自分の記憶を話すのを聞くのは面白いのだろう。白い女からレンガ塔の話を聞くと嬉しくなった。崩れてしまったのは残念だが、女の空想の中に屹立する塔で満足だった。通い詰める男が愛着を抱いたのは、女の頭にある塔だった。実際に目にすると落…

Tower

いまだ残暑が続く昼日中、何かの気配とともに身体の底から猛烈に不安がこみ上げ、それと呼応するように風景が揺れ始めた。騒がしい音がわき起こり、遠くで間延びした人の声が聞こえた。決定的なかたちで西郊に人が流入し、郊外にたいする意識を変えたのは、…

Otter

マンションの階下に住む冨山という女性は、東京生まれの東京育ちで、かつて長らく生家のある中央線沿線に暮らしていた。だから最も東京が様変わりした時代を目撃したといってもいい。もうとっくに定年を過ぎていた女に言わせると、当時あのあたりは本当に何…

Room #6

夜で暑い頃だ、ベランダが空いている。Aはスーパーには自分が行くと言った。Iは今日、帰ってこないから。だれかからもらった梨がある、とAはつけ加えた。秋口なのだろう。ロフトから降り、自分も駅前に用事があるから行く、と私は応え、Aと一緒にマンション…

Room #5

夕方だった、夜になる少し前の美しい時だ、季節は知らない。部屋の電気は消えていた。ゆっくり、滲むようにとしかいいようのない速度で部屋が暗くなっていく。ベランダはいつものように空いている。昨日までAとIの知り合いが大勢この部屋に集まっていた。ロ…

Room #4

夏の日の夜、冷房がつけっぱなしの暗く冷たい部屋に入ると、荷物を置き、軽く風呂に入った。ものすごく疲れていた。ぬる目のお湯につかっていると、部屋に誰か入ってくる音がした。眠気が最高潮に達し、風呂場から出ていくのもつらかったから、もしIかAなら…

Room #3

別の日、ある朝、合鍵を使って玄関に入ると中から物音が聞こえた。いや、物音が実際に聞こえたわけではなく、動いた感触が物音としかいいようのない形で感じられたのだ。声をかけたが返ってこない。靴を脱ぎ、鍵を靴箱の上の皿に置き、部屋に入るとだれもい…

Room #2

秋の日、丘の先端を上がり、公園を抜け、畑を横目にマンションに向かって歩いた。玄関のドアを開けると、滲むような白い光が廊下まで溢れ出していた。人の家の匂いがする。おじゃまします、と小さく声を出しても返答がない。いる?、と言っても声はない。よ…

Room

部屋の中は暗かった。電気をつけなかったからだ。とはいえ、カーテンがなく街灯や車の光が差し込むから、暗闇ではない。慣れればなんだって見えるものだ。だから電気などつけなくてもいい。玄関を入ってすぐの戸棚を開けると、丸められたヨガマットがいくつ…

Grave

墓地の奥を歩くと、背の高さよりもずっと高く、黒々と摩耗した古い墓石が並んでいた。江戸時代の年号がなんとか読み取れる。晴れて、午前中の冷たい空気に周囲の植物は薄く輝いていた。知人に連れ添って彼岸の墓参りに来るのも一年ぶりになる。イチョウやシ…

A pond

澄明で素晴らしい夕暮れの後、ドトールを出てすぐ目白橋を渡ろうとすると、左手から切り通しを猛スピードでやってきた電車がちょうど足下を通り抜け、同時に何かが体の中を通り抜けたような生々しい感覚がわき起こった。確かに最後尾の車両が通った瞬間、尻…

Acorn

夕方前、砧公園でIの弟と落ち合う。運動場や美術館を抱える広大な公園だ。クヌギのぼってりした、深く帽子をかぶったドングリが足下でぱりぱり音を立てる。晴れて、もう風がひんやりしている。丁寧に配置され手入れされた木々の鬱蒼とする公園には幹線道路…

Paulownia

大きな実をつけた桐の、茶色く蝕まれ始めた大きな葉。高木の桐を見るたび、春の、その繁殖力には見合わない薄い紫色の花が思い出される。だから年中、その木は私に見られるたびに淡い紫をまとっている。早まった夕暮れ、窪地にある井の頭公園は周囲よりさら…

City of glass

今日の昼ごろ、Hからメールが届く。Mのブログを読んだ妻からある小品を教えてもらった、とメールにはあった。十九世紀末に生まれ、四十年代初頭に亡くなった作家・詩人の作品だ。かなり有名らしいけれど、Hはタイトルも知らなかったし、もちろん初めて読ん…

Bus stop

急な話で、あっけにとられた。Mが畑に沿う道路に出たと思うと、ぴったり時間をはかったようにバスがやってきて、それでもまさか乗るまい、乗るはずがないと思った。で、次の瞬間、バスの中を奥へとすすむMの姿が窓の向こうに見えた。私はその場に立ち止まっ…

A Chase

ある場所を思い浮かべてみる、たとえばある家を。するとその想像には周囲の場所も含まれはしないか。あるいはその場所を含む地図のようなものを想像するかもしれない。けれど場所というのは、ある個人が知っているほんのわずかな道筋でしかない、とHさんは…

・写真→Tumblr(https://yumitsue.tumblr.com)

PUFFY

【メモ】雨時々曇り、肌寒い。ヘッドライトの雨、雪のよう。夜、中野でAと四十分ほど密談。Aはもうスウェットを着ている。Aカフェラテ、自分はエスプレッソ。A多忙。新しいリトルプレスについて多少。合宿でもしようかと提案される。Aについてはブログ…

Barbarians

夕方過ぎに住宅街を移動する猫は有能な兵士のようで、出会うとしっかり怯んでしまうことがある。細やかで的確な索敵(クリアリング)、無害でぼんやりした人間に向ける「お呼びでない」とでもいうような目つき、無駄のないルートを歩くしなやかな動き。そう…

Madeleine

Hさんによると、この週末、久しぶりにIに会ったのだという。相変わらず忙しそうなIは、さっと話してさっと帰っていった、と書いている。私自身はもう何年も彼と会っていない。Iは大学を卒業してからしばらくはオクシモロンに参加していたが、仕事の関係…

Gardens